正統派のパート
学生の卒業論文作成の実験を手伝い、彼らがそれをもとに論文を提出して卒業するのを見るにつけ、このままでいいのかという絶望感が襲ってくるようになりました。
23歳の時、新聞に「正規社員募集」としてT商事株式会社が求人広告を出していました。
当時の東京芝浦電気株式会社(現在の株式会社T)家庭電気部門の全国ネットの販売会社で、間違いなく大企業と呼べる会社です。
早速、受験することにして履歴書を持って行きました。
高校を卒業するときの就職難の状況は先に述べましたが、このころもまだ状況は厳しく、このTの募集に対しても約80名の受験者がありました。
この中から2名採用とのことです。
採用試験では、一般常識、英語、専門科目が出題されました。
高校を卒業したままの知識ではとても太刀打ちできなかったと思いますが、九州大学に就職してから助教授の指導もあり、かなり勉強を積んでいたことが幸いでした。
造船学や電気工学の聴講をさせてもらったり、勉強のために英語の造船学の原書を訳したりしていた経験が大いに役立ちました。
また一般常識で、「ハム仲間とは何か」と出題されたのには驚きました。
当時はまだハムについて知らない人も多かったようですが、私の解答は明快なものでした。
「私は、ハムです。
第1級アマチュア無線技士で、コールサインは「A60Kです」とだけ書きました。
Tの方も驚いたようです。
人生の中では各種資格の取得等、具体的な目標を持って勉強することもあれば、目的が定まっていない時期もあるかもしれませんが、いずれにしても人生の一瞬、一瞬に何をしていくかということは、後々大きな意味を持ってきます。
特にこのT受験では、まるで私のために用意されたかと思えるほど、私にマッチした出題科目と内容でしたが、これは助かりました。
考えてみると、その場その場に全力で取り組んできた結果が、このような巡り合わせを呼び込んだのかもしれません。
競争率40倍の難関を突破して、合格となりました。
K助教授に、自分より若い人がどんどん大学を卒業していくのを見るにつけ、このまま大学に勤務するのが耐えられないという理由を話して、退職することを申し出ました。
助教授のいろいろな論文には、この論文はアシスタントのM君の協力によるものだということが、いつも書かれていました。
これは正式に助手に任官する時のために大事なことで、後2年もすれば「文部教官九州大学助手」の任官基準を充たすところまできていました。
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